我儘・壱


時は三蔵一行になる前…








「惷香
茶」


「玄奘様しかし私では…」


「何度言えば分かる
気にするなと言っただろう」


「分かりました…」








彼女は周りの僧に遠慮し
三蔵の執務室と自室しか往来しない様に極力配慮していた


しかし三蔵はこの調子で調理場などへと赴かせる





惷香は慶雲院の三蔵に個人的に仕える身



惷香は元々
長安にある山奥にある寺で神子をしていた



惷香が住む寺に三蔵が妖怪退治にと向かった時

惷香は妖怪に差し出される人柱として短い生涯を閉じようとしていた















3年前 夏―――









「なぁ三蔵
こんなボロボロな寺に人なんか住んでんのかよ」








蝉が絶え間無く鳴き続ける山奥


木々の中に埋もれるかの様に

小さな寺が建っていた




寺と言われてもあちこち壁や屋根はボロボロで
壁からは雑草が生える程見るも無惨な建物であった








「こんな山奥に住む人間だ
偏屈なヤツなんだろう
行くぞ」








シットリと汗ばむ身体を奮い起こし悟空を先頭に建物の入り口…


とも呼べない
ただの板が壁に寄りかかっただけの入り口を三蔵は倒れない様にノックをした








トントントン…









「誰も出て来ねーなァ」








悟空は板の隙間から建物の中を覗き込む


建物の中には人影もなく

溜め息混じりに三蔵は建物の周りを見渡した





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