初夏・九


グイッ――!!









三蔵は3人に囲まれて会話をしている惷香の手を掴み


ツカツカと歩き出した








「え ちょ…ちょっと三蔵?」


「言っても分からねぇみたいだからな」







三蔵の行動に唖然とする3人から距離を取る




3人に声が聞こえない場所まで離れると クルッと惷香の顔を真っ直ぐ見た








「おい お前は…そんなに嫌だったのか」


「は…い?」









三蔵は木に寄りかかり
腕を組みながらボソボソっと言う








「だから
俺がお前に…人工呼吸したのが嫌なのかと聞いている」


「え…?ええ?
私…嫌そうに見えるの?」


「さっき俺に人工呼吸されたと聞いてから お前目も合わせないだろうが」








三蔵はタバコに火を着け
白い煙がフワリと浮かんだ








「あ…いえ
それは ただ恥ずかしくて…」








惷香は俯きながら顔を紅潮させ 両手で頬を隠した



ポロッとタバコの灰が床に落ち
三蔵はテントに向かい歩き出し 惷香の横で惷香の頭に手を置いた








ポスッ―…









「なら 自惚れていいんだな」








三蔵は惷香の横で
更に小さな声で呟いた








「え…?」









三蔵に視線を向けると

クッとはにかんだ笑顔をした



その顔を見た瞬間
一気に顔が暑くなった








「今度から泳ぐ時は俺だけに掴まるんだな」








三蔵はスッと惷香の耳元に顔を近寄せて囁いた


















「掴まるなら人工呼吸じゃなくキチンとしたのをしてやる」






初夏の出来事


暑いのは夏だけのせいじゃなかったのかもしれない…




初夏・fin
(あとがき→)

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