初夏・六
惷香の視界には
水中で泡立つ白い沢山の気泡
必死な3人の顔
だけど3人は互いを避け合い
惷香に近寄れず
ゆっくりと惷香の視界は離れて行った
『まさか…私
ここで死ぬの…?』
沈んで行く身体に水草が絡まり
3人から視界を奪い 更に身動きが取れない
『たす…けて…』誰にも届かぬ声
3人は惷香を見失い
喧嘩を止めバシャバシャとアチコチを探している
惷香の視界からは
3人の泳ぐ姿が見えるのに
3人からは私が見えない…
ガボッ―……
『息が…もう…』惷香がガクンと力が抜けた時
視界に見えたのは金色に靡く髪だった
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