初夏・四
「惷香
俺に掴まンなよ」
悟空は惷香に手を差し出す
湖の真ん中近くともなると
やはり深い…
惷香は藁をも縋る思いで悟空の手を両手で掴んだ
「こ…ここ結構深いよ
悟空
離さないでね?」
「あったりまえじゃん!」
悟空は嬉しそうに笑い
惷香の背中に腕を回す
「あ、この天然猿!
お前は小さいんだから足は届かねーだろ
惷香ちゃん
俺が離さないでいてやっから」
悟浄は横から惷香の腰に腕を回すと
グイッと手繰り寄せた
急に水中移動した惷香は
小さく「きゃ…」と悲鳴を上げる
「悟浄
惷香を怖がらせてどうするんです
ここは僕に任せて下さい
さ、惷香
僕に掴まって下さいね」
八戒は惷香の真面目から抱き寄せ
ニコリと微笑んだ
「何すンだよ!
惷香は俺と泳ぐ為に湖に入ったんだからな!」
悟空は負けじと惷香の腕を引っ張る
「だ か ら
お前にゃ荷が重いってんだ
八戒も離せっつーの」
悟浄は再び惷香の背中に腕を回すとグイッと引っ張る
「アナタ達じゃ惷香が心配ですからね
さ、惷香
僕の首に手を回して掴まって下さいね」
八戒は再び真正面から抱き寄せる
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