想い・壱
―天上界―
あのばばぁに言われた
『あの女はどうだ?』
ふざけんな
突然出会った女を
【どうだ?】
と言われて何をどうしろと
ある日あのクソ猿を探していた日
あの女に出会った―
建物の影で猿の後ろ姿を見た時
勢い良く悟空を蹴り飛ばした
俺の怒涛に悟空 天蓬に捲簾が声を出す中
あの女は黙って俺を見た
吸い込まれるかの様に目が合った
銀色の眼
二重の目に色白の肌
黒い髪に白衣
確か以前――
『前 観世音菩薩の所で会ったな』
これが精一杯の言葉だった
何だこの女――
『あ、はい惷香と申します
医師をしています』
透き通る声
この女には近寄るべきじゃねェ
咄嗟に思ったのが
これだった
.
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