導き・八


町に戻り悟浄はそのまま宿屋へと向かった


惷香を抱いたまま悟浄の部屋へ行き
椅子に惷香を座らせる様に下ろした

明るい場所で見ると以前よりも窶れ
風呂にも入れて貰えてなかったのか

あちこち汚れ
所々傷がある


悟浄は言葉を失った…








「ごめんね悟浄…
久しぶりに会えたのがこんな形だなんて…」








惷香は俯きながらポツリと言う


悟浄はコーヒーを煎れ
惷香にマグカップを渡す








「無事で何よりじゃねーか
ほらコーヒー
宿屋だからインスタントだけどな」









惷香は両手で受け取り
ゆっくりと口に運ぶ








「悟浄…
前に言ってたピアスね…
もう返さなくて…いいの」








惷香はコーヒーを見つめながら言った








「あのピアス…
1つ無くなっ…」








シャラ…










惷香の顔の前に2つ対になったピアスが垂れ下がる








「―――ッつ!」


「このピアスどうも縁があるんだな
惷香が落としたのを拾った奴がいてよ
まぁそのお陰で助けに行けたんだがな」








惷香はマグカップをテーブルに置き
震えながら両手を差し出す


悟浄は惷香の手の中にピアスを置いた


惷香はピアスを握り
ポロポロと涙を零した








「ありがとう悟浄…
ありがとう…」


「女を泣かせるのは趣味じゃねぇってーの」








悟浄は惷香を優しく抱き締めた






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