夢現・五
俺はその日から女が夕方に通る天界の門へと
足繁く通った
「また会いましたね」
女は偶然だと思っていたらしいがそれでも良いと思った
ある日
俺は女に名前を聞かれ
俺も名前を聞いた
惷香…
俺は1人で名前を呟く
「惷香…」
不思議に心が温かくなった
俺を1人の【人】として
唯一見てくれた女…
俺が惷香に心を奪われるのも
自然な流れだった――
俺は闘神としても討伐の任が下り討伐へと赴き
戻ると惷香が必ず治療に来てくれたのが
唯一の楽しみだった
「焔
今回も随分酷い怪我ですね…」
「1人だからな…ッつ!」
「あ ごめんなさい
痛みますか?
ではこの薬を食後に服用して下さいね」
「いやありがとう
いつも助かる」
俺は惷香の横顔に見とれた
.
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