翡翠の涙・九


「逢えるさ
逢いに来る」









悟浄も真っ直ぐ前を向けたまま
タバコに火を着け
ふっ…と笑う

















『連れて行って
 連れて行く





その1言が言えないのは






互いに分かってる








けど

















一緒にいたい
一緒にいて









その1言すら言えない…』








2人の時間はアッと云う間に過ぎ去った





旅立つ日




空が曙色に染まる時


悟浄はいつもの河原にいた



タバコの煙をふんわり吐き出し
頭をガリガリ掻いた








(さすがに…来ない…か)








悟浄は伏し目がちに視線を変えた先には惷香が立っていた








「いたなら声掛けろって」








クスッと困った笑顔で惷香を見ると
惷香は何かを投げた




悟浄は右手でパシッと受け取る








「いつか…いつか
アナタが来るまで…
落とし物なんです
だから必ず…必ず返して?」








手の中をスッと開くと
翡翠色のピアス――








「必ず返してやるって
安心しな」









悟浄はふっ…と笑い
切ない笑顔を向けた




悟浄は惷香の近くに歩き

腕を掴むと抱き寄せた








「俺を忘れんなよ?
こんないい男
他にゃいねぇぜ?」








惷香は悟浄の背中と腰へと腕をゆっくり回す








「私を…忘れないで
いつまでも待ちますから…」








悟浄は惷香の顔を見つめると

スッと唇を合わせた





惜しむかの様に離された唇に
熱が籠もる



コツリ…と額を合わせ
アナタに誓う























また 逢いに来る













翡翠の涙・fin

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