甘美・弐


三蔵の分のガトーショコラを残したまま時間は過ぎ
夕飯を済ませると皆部屋に戻った







惷香は残ったガトーショコラを見て溜息を付く








好みじゃなかったのか

甘いのは苦手なのか









そんな事を考えながら冷蔵庫にしまった






そろそろ寝ようかと部屋の明かりを消し 寝床に入ると
外には月明かりが漏れていた







そこに人影が見える







泥棒?
妖怪?








ガバッと起き上がり ソロソロと窓に近寄ると
煙草の煙がふんわりと見えた








三蔵……?







窓を開けると窓の横の壁に凭れて三蔵が煙草を吸っていた









「こんな夜更けに散歩ですか?」


「まぁな…おい」


「はい?」


「昼間のよこせ」


「え?」


「昼間作ったヤツだ」


「あ…」









惷香は冷蔵庫から残されたガトーショコラを取り出し三蔵に差し出した






三蔵はガトーショコラを手掴みで取ると ガブリと口に頬張った







「あめぇな」


「…チョコですから」


「ふん」









そう言いながら全部食べると
惷香の唇に指に付いたガトーショコラをベタリと付ける








「ッ―――…!?」


「あめぇって言ってんだろ」









そう言うと三蔵は惷香の唇に付けたガトーショコラを
舌でペロッと舐め上げた








「一番甘いな」









意地悪そうな笑顔


眩暈する程の胸の高鳴り






この甘味が一番甘い――





それはあなたの唇








甘味・fin

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