翡翠の涙・八


次の日もまた次の日も次の日も

と、悟浄は約束をしては惷香に逢いに行った


そんなある日宿屋へ帰ると
宿屋の前で八戒が腕を組んで立っていた








「何だ八戒
お出迎えかぁ?」









ククッと肩で笑いながら宿屋へと入ろうとした








「随分と熱心ですね悟浄
アナタにしては珍しい程」


「はっ
説教か?
俺ァ中学生かっつーの」


「そうではありません
ただ入れ込むのも程々にしないと僕達にはやるべき事があるんです
後2日でこの町から離れる…」


「分かってる!
分かってンだよ…ンな事はよ」








八戒はふぅと溜め息を付き宿屋へと向きを変える








「ここでアナタと離れるのは
ご免ですからね」









八戒はそうボソリと呟くと
宿屋へと入って行った








「分かってる…っつーんだよ」








暗闇が覆う中
悟浄の声は誰の耳に届く事なく




闇夜に消えた――――






















「出掛けて来るわ」










また次の日
悟浄は宿屋を後にした


待ち合わせの河原で昨日の八戒の言葉が木霊していた


真剣な顔で考え込む悟浄を見て
惷香は声を掛ける事が出来ずに立ち尽くしていた


はっ…と気が付き悟浄はクスッと笑う









「来たなら声掛けてくれよ」


「あ…ごめんなさい
何か真剣な顔でいたから」


「気にする事ねェって」








悟浄は変わらない笑顔を向けた


惷香は悟浄の隣に腰を下ろす









ザワザワ―――









風が靡く河原で惷香がやっと口を開く








「もうすぐ…行ってしまうんですよね…」








惷香の言葉に悟浄は息を飲む








「いつか…また
逢えますか…?」








顔は真っ直ぐ前を見たまま
惷香は悟浄に尋ねた




あまりにも凜とした横顔に
悟浄は言葉を失った





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