翡翠の涙・七


宿屋に戻ると土砂崩れの話を三蔵にすると
予想通りに不機嫌さを増した








「でも三蔵?
山道を抜けない限りは西へは進めません
素直に待つしかありませんよ」








八戒は悟浄と三蔵にビールを渡すと
困った様に笑った









「じゃあ1週間はこの町に滞在するってか?」


「それしかないだろう」








悟浄は『ふーん』と言いながら
何かを想いふけった面持ちでビールを飲んだ















次の日
悟浄は三蔵達に

「出掛けて来るわ」


とだけ伝えると昨日の河原へと足早に急いだ


河原に着くとまだ惷香はいない様子で
悟浄は河原にドサリと腰を下ろした








「なーんか甘酸っぱいな
こーゆーの」









悟浄はククッと笑うとゴロリと寝転がった








「何が甘酸っぱいんですか?」








寝転がった悟浄の顔を惷香は覗き込んだ








「よォ
来てくれたのか」


「約束…したでしょう?」








惷香は悟浄の隣に座ると
また他愛のない話に夢中になる








「じゃあ悟浄さんは旅を?」


「まぁな
惷香はずっとこの町に?」


「いえ
母の持病の治療で自然が多いこの町に越して来て…」








途切れる事なくお互いの話をしては
まるで恋人同士の様な雰囲気で2人の時間は過ぎて行った


空も茜色に染まると 悟浄は








「また明日会えるか?」


「ええ…明日またここで」








と約束をする


何故か毎日でも逢いたくて

悟浄は









(ガラじゃねェっての…)








と自分を笑った








.

[ 57/216 ]

[*prev] [next#]
[目次]
[栞挟]
書物一覧に戻る



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -