翡翠の涙・六


「じゃあ昨日の薬ってのは親御さんのだったのか」


「ええ
けどもう薬も飲んで落ち着いたので」









河原で2人座りながら
昨日の夜の話を始めた


どうやら惷香は病弱な親御さんの為に薬を買いに行く途中に絡まれたと言う


惷香はピアスを取り出し
自分の耳に付けると惷香の翡翠の髪に派手に目立つ事なくユラユラと揺らめいた








「そりゃ大切な物なのか?
もしかして彼氏からのプレゼントとか?」


「クスクス…彼氏なんていませんよ
これは死んだ姉の形見で」








笑顔の奥に影が差した








「あ、わりィな
余計な事聞いちまったな」


「いいえ平気です」








ふふっ…と微笑む惷香は

【女は弱い】

悟浄のそんなイメージは覆された













夕方
日が傾くと惷香はそろそろ帰らなくては

と立ち上がった


じゃあ俺も
と立ち上がった時フッと三蔵の言葉を思い出した









「あっちゃ〜
忘れてた」









クシャリと前髪を掴み

『不味いな…』

と顔を曇らせる









「どうしたの?」


「あ、いや
西に向かう道で山道について聞いて回るんだったが
しゃーねぇ明日にすっか」


「え?山道?
確かあそこの道は数日前の地震で土砂崩れで封鎖されてるって聞いたけど…」


「な…
マジかよ」


「復旧には1週間は掛かるって噂になってたんだけど…」


「三蔵サマが不機嫌になりそうだなこりゃ」








ふぅ…と溜め息を付くと
悟浄は惷香の手を握り締めた








「惷香ちゃん
ありがとう助かったぜ」


「え?い、いえ…」








惷香は赤く夕日で染められた顔をより一層赤らめた








「また会えっかな?」


「ええ…」


「明日またここで…」


「じゃあ…明日に…」








繋いだ手をお互い
スルリと離し後ろを向き合い

違う道へと戻った






.

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