翡翠の涙・五


「あの…ッ!
昨日は本当にありがとうございました
それで…昨日何か拾いませんでしたか?
その…ピアスを落として…」








落胆する彼女に悟浄は
自分のポケットを探り翡翠のピアスを取り出した








「これか?」


「――――ッ!!
それです!
あのッ昨日落としてしまって
今探していたんですっ!
ありがとうござい…」








彼女が手を差し出すと
悟浄は手を上へと翳した








「あ…あのっ…?」


「名前
教えてくれたら返すぜ
おじょーサン?」









ニッコリと笑う悟浄に
彼女はフゥと溜め息を漏らす








「すみません
私ったら名前も名乗らず失礼な事ばかりを…
私惷香と申します」








惷香は罰が悪そうに顔を伏せる


悟浄はスッとピアスを差し出した








「俺は沙悟浄ってんだ
よろしくな惷香ちゃん」








惷香の手のひらに
ピアスをポンッと置くと
ホッと安堵の顔を見せた








「そうだ
お礼をしなくては…
でも私あまり持ち合わせが…」









困った様に悩む惷香に
悟浄はクスッと笑う








「だったら散歩デートってので
よろしく頼むわ」









悟浄は軽く笑いながらウインクをすると
惷香は最初は驚いた表情もクスッと綻んだ








「あなたって変わった人ですね
でもそれならいいですよ」








惷香はクスクス笑いながら
警戒心は解けて行った





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