甘美・壱


「うっわ〜いい匂い!」








一番に反応したのは悟空



台所から漂う甘い香りに
悟空は目を閉じて鼻をクンクンさせる









「悟空?はしたないですよ」








八戒が悟空を注意するも
部屋に広がる甘い香りは悟空じゃなくても気になる









「それにしても何の匂いでしょう?」








八戒は台所のドアを開けると
惷香が何かを作っている姿が見えた








「…?
惷香何を作っているんですか?」









八戒は後ろ姿の惷香に尋ねる









「あ、八戒
今チョコを作っているんです」


「チョコ?」


「ええ今日バレンタインですから」


「ああー
確か女性が男性にチョコを渡すと言う行事ですか
男だけで今まで旅をしていたのですっかり忘れていましたよ」








八戒は頭を掻きながら笑う









「台所を占領してすみません
もうすぐ終わりますから」









惷香はそう言うとオーブンに何かを入れると道具を洗い始めた








「構いませんよ
夕飯まで時間がありますからね
では僕はあっちに行ってますね」









そう言うと八戒はそのまま台所から退散した


その後オーブンから漂う香りに悟空の口元は緩み
涎が滝の様に溢れた頃
三蔵と悟浄が部屋に入って来た








「おっ何だこの匂い」


「あまったるい…」


「いい匂いするよな?な?」









悟空は嬉しそうに2人に話をするが
2人はいかにも嫌そうな顔をしている



その時台所のドアが開き
コーヒーと共にガトーショコラを惷香が運んできた









「あのこれ作ったんですが」








1人1人に差し出しながらコーヒーを渡す








「へ〜これ惷香ちゃんが作ったの?
やるじゃん」


「俺でかいのね!」


「僕にもですか?
ありがとうございます」








各々嬉しそうな顔をしながらガトーショコラを取り口に運ぶ




しかし三蔵は新聞を開くと煙草を口に咥えコーヒーだけを口へと運ぶ









「さんぞー食わないなら俺にちょーだい」









悟空が三蔵のガトーショコラに手を出そうをした瞬間
三蔵の銃がカチャリと鳴る









「黙って食ってろ」


「食わないならくれても…」









と不満そうな悟空を余所にまた銃をしまうと新聞を開いた








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