桜散る・七


次の日から惷香が親と一緒に来ると
悟空は喜んで惷香を連れ出した


惷香も最初は遠慮がちだったものの
子供の様に無邪気な悟空に次第に友達の様に仲良くなって行った








「うわぁ
ここから見下ろす景色って
建物全て見渡せるんだなぁ」


「だろ?
俺1人でよくこの木に登って
建物とか見てたんだ」


「へえー
悟空は何でここにいる?
玄奘三蔵様のお付きの者?」


「何でって…
三蔵が俺を出してくれたから
俺はただ三蔵といたくて
ここにいる」









高い木の上から建物を見下ろしながら悟空は真面目な顔をする








「いたいから…いる…か
私にはない選択肢だ」








惷香は顔色を曇らせる








「何でだよ
惷香もいたい所にいればいいんだよッ」


「私はそうは行かない…
気を抜けば身体から魔獣が目を覚ます
周りに危害を加えてしまう…
だから私は昔から…
自分じゃ何も選べない」


「そんなのッ…!
そんなのっておかしいだろ!自分の事は自分で決めてもいいじゃねぇかよッ!」








惷香は無言で立ち上がり
スルリと木から降りた








「分かんないんだよ…」


「え?」


「お前には分かんないだよ!
私の気持ちなんて
これっぽっちだってな!
私だって決めたいよッ!
好きな場所に行きたいっ!
でも…でも無理なんだよ…」








悟空はヒョイと木から飛び降りた








「なら…ならさっ!
いつか俺と…
俺と…」


「え…?」









悟空は自分でも何故こんな事を口にしたか分からなかった








だけど
放ってはおけなかった


ただそれだけ…




それだけなんだ―――







.

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