桜散る・四


悟空はローブの上から手首を掴んだまま
建物の裏手にある木々が生えている場所へと走った








「まっ…待って…!
はぁはぁッ…」


「あ、ワリ」









木の下で慌てて手を離すと
ローブの人間は下を向いて
膝に手を付き肩で息をする


徐々に息も整い
体制を起こすと悟空はスルスルっと柿の木に登り

柿をむしゃぶりついた








「ぶっ!」









ローブの人間はそんな悟空を見て吹き出した








「まるで猿!」


「猿って言うなよ!
俺悟空っての
あんた名前は?」


「………」


「お前名前分からないの?」


「そう…じゃないんだけど…」


「ないの?」


「ずっと…名前で呼ばれてなかったから…」








木の上からでも分かる程
ローブの人間は肩を落とした


悟空はスルスルっと木から降りて来て柿を差し出した








「うまいから食えよ!」








悟空はニカッと笑う

そんな顔を見て
フードをスルリと落とした



黒い長い髪を三つ編みに結び
瞳も髪と同じ黒い大きな目


歳は15、16歳って所か




「…私は惷香
私は…身体に魔獣を従えた
魔獣士
玄奘三蔵様には私の中から魔獣を出す術があるかを聞きに来た…」


「お前…女!?」









悟空は目を真ん丸くさせ
尻餅を付いた






.

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