血の夜/五

 
小さな林の先、林と言っても通りの左右に隙間のある木々が並ぶ程度の恐怖感もない道路
その先を抜けた所に古城が海の崖際に建っていた

おかしな話皆この古城の存在を知っている
惷香自身ここに古城があると知っていた。

しかし気になった事がない。
誰かと会話に出た事がないのだ…


何故だろう?
これほどに古く この地域に唯一ある古城だと言うのに誰も話題にもしない――






そんな事を考えていると背筋にゾワリ…と悪寒が走る
図書館から徒歩10分程度で古城の入口に差し掛かる。


近くで改めて見ればそびえ立つ古城は
何故自分が幼い頃に肝試しなどで来なかったのか

そう言えばここの古城っていつからある…?














「こっちが入口…って、オイオイ…」















悟浄が振り返ると惷香はキョロキョロと見渡し
携帯のカメラであちこち撮っていた















「あッ…すみません。
映るかなって思って…」


「霊的なヤツっての?
まぁあるかもしれねーな。
かなり古くからあるし、モスマンが出るとか言われてたらしーからな」


「モスマン!?蛾人間の!?」


「まぁ他にも…ヴァンパイアとかな」


「ヴァンパイア…あの吸血鬼の…」


「怖いってか?」


「あ…いえ。
先日見た本で見ていたんですけど、何か魅入られてしまって…」


「……へェ?」













笑う悟浄の顔は
どこか嬉しそうであって――


目が笑っていなかった……




.



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