血の夜/四
「えッ!!?ちょ、ちょっと!!あのッ!!」
「止まった…か。
ッたく…気ィつけろよ?」
放した手はまだじんわりと温かく
再度頭に置かれた手が優しく撫でると 見上げた彼の顔は先程とは違って青白くもなく
笑む顔は優しいのに――
「ああ、言ってなかったな
オレはあの古い城に1人で住んでる悟浄。
アンタは?」
「あ、私は惷香です…
向こうのアパートに住んでいます…って、城ですか!?」
「ああ、親のイサンってヤツな。
古いだけでいい事ねーっての」
「でも凄い…色々いそうで…」
「いそう?」
「あ、何でもないです!すみません…」
「クククッ
いいよ。なら来てみるか?
期待するのがいるかしらねーけど」
「え?でも…」
「俺自身全部の部屋を知ってる訳じゃねーし
案内とか出来ないのもあンだけどよ」
笑う彼…悟浄さんと目が合い
夕日のせいなのか それはとても紅く 緋い――
「行き…ます…」
何故そんな事を言ったのか
ハッとした時には図書館を出ていた……
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