血の夜/弐

 
数日後

連日図書館で本に没頭し、帰路に着く日々を重ねたある日の夕方
いつもの未確認生命体の本を本棚に戻して蹄を返そうと振り返り1歩








ドンッ――













「あッ…すみません!」


「いや、ダイジョーブ。
アンタこそ大丈夫か?」














見上げる程の長身の男は
夕日のせいか真っ赤の髪をサラリと顔に流して覗き込んできた


顔を見た男性は青白い顔をして
困ったように目尻を下げて笑った…













「平気そうだな。
わるかったな」


「い、いいえ。
こちらこ…」













『そ』の言葉もかき消される程小さな声は相手には届いたかは分からない

しかし彼は惷香の頭に手を置いてポンポン…と撫でる













「アンタが謝る事じゃねーから。
つい いい"匂い"に釣られた俺が悪いんだって」


「いい匂い?」













彼の言葉に顔を上げるも
すぐに視線を外してしまう。

正直対人は苦手だ…。






だけどこの人…








この相手こそ惷香がヴァンパイアならいいと思う相手。
名前も知らず、住んでいる場所も知らない。


だけど街中で何度か見かけた事がある。

これほどの赤い髪で長身の男性が目立たない訳がない
何度か見かけた時は毎回違う女性を連れていたのに、いつも寂しそうだったのを覚えている。


その相手はその後見かけたことはないが、大人の付き合いと言うものなのだと
軽くショックを受けたものだった――








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