血の夜/壱


「これはゴビ砂漠にいるムカデ…?
デス・ワームかァ…」












ボソボソと書籍を図書館の本棚に寄りかかったままで没頭している女性が1人
彼女は惷香。

生粋の未確認生命体のオタクのジャンルに含まれる。

今日も図書館で様々な未確認生命体の記載がある書籍に没頭していた。


フッと目に付いた項目に眼を奪われた―――














『ヴァンパイア――
民話や伝説などに登場する存在で、生命の根源とも言われる血を吸い、栄養源とする蘇った死人または不死の存在…
また基本は吸血した相手を死に至らしめる。
しかし稀に生涯を共にする相手のみヴァンパイアに変える能力を持ち、数百年以上も延命し続ける孤独な生きもの』



挿絵には牙の生えた男性のヴァンパイアが描かれ
妙な美しさに惷香は一瞬にしてのめり込んだ。












「こんな美しい未確認生命体がいたら見てみたいものだけど…
有り得ないかな
ああ、あの人がヴァンパイアなら私もなりたいのに…」












ため息混じりに書籍を閉じ、本棚へ戻すと既に空はオレンジ色に染まっていたのに気がついた。
慌てて図書館を出て帰路へと向かう。





ドサッ――





戻した本がキチンと入っていなかったのか
本棚から零れ落ちた。


その本を拾ってパラパラ…とページを捲る人物は
惷香が見入っていたページでピタリと捲る手を止めた













「……へェ?」












含んだ物言いで前髪を掻き上げる男は
夕日に照らされて更に真紅に見えた――






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