夢の為に/9






……

………















「ほー?ンでそのオネーチャンは?」


「次の街にいるそうだ。
急ぐぞ」


「久しぶりに会えるなー!
すっげー楽しみ!」


「僕も楽しみです」


「んで、何でテメーは携帯を持ってるのを隠してやがったんだっつーの」


「教える気がないのに持っていると言って何になる。
八戒。急げよ」


「はいはい。
スピード上げますよー」















そのまま三蔵一行は大急ぎで次の街に到着した。

メールでは宿屋にいるとの事で、その街にある宿屋へと赴く。















「すみません。
ここに惷香さんと言う方が泊まってると…」


「おー!三蔵!悟空〜!」















八戒が受け付けで聞こうとした時、背後から女の声が聞こえた。
振り返るとそこには髪の伸びた惷香がいて…















「あららー?
噂の下僕さんはこの人たちか。
私惷香。よーそろー」


「あ、以前お会いしてますね。
覚えていますか?」


「あー!あの時のメガネくん。
おーおーおーおひさしー」


「へーかっわいーじゃん。
俺悟浄って言う…」


「おい。
いつまでこの街にいれる」


「てめェ!まだ俺が喋ってんだろっての!」


「まァまァ。
三蔵に譲ってあげないと後が大変な事になりますから、僕たちは部屋を取って待っていましょう」














八戒は不満を言う悟浄と悟空を連れて、受け付けを済ませると部屋へと入って行った。















「散歩に行くぞ」


「あいよ」















以前より伸びた髪。
少し大人びた雰囲気に三蔵は惷香を真っ直ぐに見る事が出来ずにいた。















「元気してた?」


「見ての通りだ」


「あの3人と一緒なら安心だのう」


「お前は言葉遣いが直ってないままだな」


「そう簡単に直んねーし。
それにしても三蔵のメールは業務連絡みたいだよね」


「あ?」


「今からここの街に行く。だけとか怪我をしたが大したことはない。とか…」


「他何を送ればいいんだ」


「写メとか、文字なら顔文字とか絵文字とか?」


「何だそれは…」


「こうやって使うんだって」















惷香は自分の携帯を取り出して三蔵に画面を見せながら説明を始めた。
1つの画面を見るのに、2人の距離は当然近くて
惷香はそんな事も気づいてないまま説明してるが、三蔵は画面よりも惷香を見ている――














「…ってやるの。
わかっ…」














フイッと顔を上げて三蔵を見た。
三蔵の顔がすぐ目の前にある事に気がついて、一瞬にして硬直する。















「お前はまだ踊り以外はからっきしだな」


「ンなッ…!?」















顔を赤らめる惷香を三蔵は抱きしめた。















「惷香。
俺は三蔵法師だ」


「わわわわ分かってるけど!?」


「この任が終えるまで、お前の側にいるとは約束は出来ない。
だが、任が終わればお前の側にいる。だから…」















三蔵は惷香の肩に手を置き、見つめ合うように距離を取る。















「俺は…離れていてもお前を好きでいる自信はある。
お前は耐え切れるか?」


「耐え切れなかったら…ついて行ってるっつーの。
そこまで脆い女じゃないし」


「フン
ならお前の気持ちを聞いてやる。
素直に、言え…」


「さんぞ…好き…です」


「上出来だ…」















三蔵の顔がゆっくりと近付いて、初めての口づけをした。
唇が触れただけの長い口づけ。






ゆっくりと離れると、三蔵は再び軽く口づけをしてイタズラに笑む。















「またメールをする。
今度はその写メやら顔文字やら絵文字くらい使ってやる」


「期待してる。
私も遠征で会いに行くから、もっと有名になってやんよ!」


「なら俺たちの任が終わるのが先か、お前が有名になるのがどっちが先か
見ものだな」


「負けねーし」


「言ってろ」















その後、三蔵から届いたメールにはピントのズレたりボヤけた写メと、いつも同じマークだけの絵文字付きのメールになっていた。















「三蔵が撮れば三蔵が写らねーじゃん…」















三蔵からのメールを見て笑う惷香がいたのだった――







夢の為に・Fin

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