夢の為に/8
それから数日後、三蔵は旅に出る支度をしていた。
三蔵が旅に出るのは明日…
惷香には自分のアドレスは教えたし、聞いてある。
お互い好意があるのはハッキリしているが、口に出す事はしてないし、距離を近づける事もなかった。
離れた時、辛くなるから――
「おー三蔵、悟空。おつー」
「惷香、おす!」
「なぁ、そこは"押すオラ孫悟空"って言ってくれよ〜」
「なんで?」
「ネタだネタ」
「傷はどうだ」
「んー?大分塞がったよ。
もうリハビリおk出されて、余裕?」
「そうか…」
「…ね、悟空。
三蔵何か変なの食ったの?」
「あー明日俺たちね…」
「悟空。
お前は先にアイツらの所に行ってろ」
「なんでだよー!
俺も…!」
「さっさとしろ。クソ猿」
カチャリ――
「だー!!
もうすぐに銃出すなっつーの!
んじゃまたな惷香!!」
三蔵の脅迫により、慌てて悟空は病院を後にした。
不思議に思いながらも、足を上下に動かしながらもリハビリをしていると三蔵が真っ直ぐに惷香を見据える。
「……明日、俺たちは西域に旅に出る」
「――そっか。」
「知っていたような口ぶりだな。
危険の伴う旅だ。
俺はやらなければならない事をすなければならん」
「せやな。
私は私でこの街で一番の踊り子になってやんよ」
「ステージを見に行けないままになったな」
「ホントだよクソ坊主め。
でも、いつか有名になって三蔵のいる街に遠征に行ってやるから楽しみにしとけ」
ポンッと惷香の手が三蔵の肩に触れた。
その手を三蔵が掴み、グイッと手繰り寄せられる
そしてそのまま三蔵の胸元にポスンと収まり、惷香の背中には三蔵の腕が周る。
「…なッ!?」
「会いに来い。
メールもしろ。
その時にはお前が望む言葉をくれてやる」
「三蔵…」
耳元で囁かれた言葉は、確実なる約束となって
冒頭のメールと繋がった――
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