夢の為に/5



「いってぇぇぇぇぇぇ!!
何してンの!!
いやマジ何しちゃってんのアンタ!!」


「動かないで!
消毒してますからね。このまま麻酔打って縫いますから動かないで!」















数人の看護師さんに四肢を押さえつけられながら、暴れる惷香の腰とふくらはぎの縫合治療が終わったのは数時間後。

治療が終わると同時に部屋に三蔵と悟空が騒ぎながら入って来る。















「で、妖怪はどうした悟空」


「ぶっ倒して来た!
そしたらさー悟浄達に渡すツボ割れちゃってさー」


「ふざけんな!
何してやがる!!」















スッパーーン!!















病室内に響くハリセンの音に、惷香は目を細めて痛そうにしかめる。
そんな惷香に気づいて三蔵が近寄って来た。















「全治1ヶ月だそうだ。
大人しくしておけ」


「そんな!だって明日は!!」


「立つ事もままならん身体でどうするつもりだ」


「ッ……」


「怪我だいじょーぶ?
結構縫ったみたいだけどさー」


「今は麻酔効いてるから痛みはないよ。
だけど…踊れないなら…」


「お前…」















三蔵が口を開こうとした瞬間、部屋のドアが勢いよく開いて惷香の務める店のオーナーや店員が数人慌ただしく入って来た。















「惷香ちゃん!ケガをしたって本当かい!?」


「オーナー…
すみません」


「あああああ…足が…
これじゃ明日は無理そうだね…」


「本当に…すみません…」


「事故みたいな物だから仕方ないよ。
明日はいつもの通り彼女に踊って貰うとするから、治るまでゆっくり休んで。ね?」















オーナーがチラッと向けた先には、病室の入口に寄りかかって微笑している女がいる。
彼女は以前八戒と出会った日に惷香に食って掛かって来た女で…















「ゆっくり養生してよ。
ステージは私に任せてくれればいいから。
ホーント怖いわよねェ。妖怪に襲われるなんて、日頃の行いかしら?」


「何あのオバサン。
性格わっりーの」


「ばッ…!
悟空何言って…ぶはッ!」


「なッ…!?
何この失礼なガキ!
アンタも笑ってんじゃないわよ!
ホントあんたの周りの人ってロクなのいないのね。
オーナー!さっさと店戻るわよ!」



「ああ…じゃあ、ゆっくり休んで。
店の事は気にしなくてもいいから。
出て来れる時に来てくれればいいからね。じゃあ」















そしてそのまま店の人間達は病院から帰って行った。


静かになった病室で、布団を握り締めながら小さく震える惷香を三蔵は横目で見ていた…








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