夢の為に/2
「ふーん?
んじゃ惷香は踊り子になる為に、れんしゅーしてんの?」
「そうだよ。
練習場はそう簡単に借りれないし、家じゃうるさい!って言われるからのう」
「だが、こんな足場の悪い所で踊って足を怪我でもしたらどうする」
そう、惷香が踊っていた場所は河原。
整備されている訳もなく、石がゴロゴロとある場所で彼女はヨロめきながらも踊るのだが…
「だって他場所なくね?
人に見せる程じゃないし…それに白鳥って水面は華麗でも水中は必死なの。
それと同じじゃん」
「意味わかんねーけど、わかった!」
「どっちよ」
「努力を人に見せるつもりはなから、人のいない"こんな場所"ででも練習をするとでも言うのか」
「…三蔵法師になるには修行とか、あんでそ?」
「何だ。いきなり」
「それと同じなんだって。
修行 なんて言い方はないけど、人の目に触れない所で努力をしてやっと日の光を浴びる。
その時が自分が成長した証。と思うんだがな?」
「なるほどな。
変わった女だと言う事がハッキリした。だが、お前の踊りは悪くない。」
「…褒めるなら素直に誉めろっての。
ま、あんがと。
何かお世話でも嬉しいっス」
「お世話じゃねーって!
マジ惷香の踊りキレイだったって」
「おーおーチビちゃん。
猿っぽいのに嬉しい事言うね。
いつかステージに立ったら、1番に呼んでやんよ!」
クスクス…と笑いながら、惷香の頭を撫でると、悟空は
『猿じゃねェ…』と小さな声で顔を赤らめていた。
休憩も終わり、再び練習すると2人は河原から追い出された。
たまに足元が石に取られても、惷香は踊る事を辞めない。
そんな姿に2人は暫く目を奪われたままだった…
…
……
………
「ほー?ンで?三蔵サマとクソ猿はそのオネーチャンに惚れたって訳か」
「貴様の脳内は単純でいいものだな」
「ンだと!?」
「あ、でもその女性なら僕も出会った事がありますよ?」
「は?どこでだよ」
「同じ街に住んでいたのに会わない方が不思議だと思いますよ?」
当時、八戒は悟浄と共に生活をしていた。
その頃は家事を八戒がしていたので、街へ食事の買い物に出た時偶然惷香に出会っていたのだ。
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