謹賀新年/参

 
夜も更けた頃

初詣と5人は外へと赴いた。
日中は混んでいるからと、夜にしたのは三蔵。

『何もしない神に祈ってどうする』

と言っていたのだが、お神酒(日本酒)があると言うと舌打ち混じりに宿屋を後にした。




歩いて5分程度の近場だが
各自御詣りを済ませ、御神酒を貰ったり
おみくじを引いたりと
騒がしい初詣は淡々と終わった












「いやーさみィな」


「なぁ三蔵!焼きとうもろこし食いたい!あ、焼きそばも!」


「うるせえ…」


「夜でも結構な人ですね。
出店も出てますし」


「今年も1年いい年になるといいね。
…くしゅッ」


「なんだ今のは」


「寒くて…鼻まで赤くなって来ちゃった」


「ったく…」















出店へと走る悟空と悟浄。
騒がしい2人がいない隙を見てか、三蔵は惷香の手を取る。


三蔵の手も決して暖かいとは言えないが、胸には暖かいものが確かにあった。

そんな2人を軽いため息混じりに八戒はチラリと見た後、少し先へと歩く。
寒くて赤くなった頬が更に赤く染まった…












「三蔵
今年もよろしくお願いします。」


「ああ」














騒がしい周りの音も2人には聞こえず、互いの手から感じるぬくもりだけが
新たな年の幕開けを祝うかのようで…














「今年は禁煙してみよっか」


「無理だな」


「んじゃ禁酒は?」


「無理に決まってんだろうが」


「身体によくないのに…」


「知るか」














三蔵の吐く息も白くて
横顔を見上げてみれば、気が付いたかのように振り返る。














「なんだ。
そんなに惚れてやがるのか」















クッ…とイタズラに笑む三蔵は狡い…
むぅ…と頬を小さく膨らませ、小さな抵抗を見せる。














「ずっと惚れていろ。
ずっと応えてやる」


「さんぞ…」















雑音の中で不意に近づいた三蔵の顔

惷香の唇に優しく触れた三蔵の唇。
離れた瞬間に間近で笑む三蔵の顔にクラリとした…














「ずっと傍にいろ…惷香」


「…はい」














遠くから言い合いをしながら戻って来る悟浄と悟空。
新たな年の幕開けも幸先はいいらしい…










謹賀新年/Fin


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