謹賀新年/壱

 
「あけましておめでとうございます」


「あけおめー」


「オメデトー!」


「あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。」


「…ああ」
















年始の挨拶
三蔵は寝起きに不機嫌そうにタバコをくわえ、新聞を広げて皆に応える。

応える、と言っても視線は新聞。
メガネの先には新聞の活字のみなのだが…


そんな中、年始の挨拶にと相変わらずの八戒が皆に着物を用意したのだが、着方も分からない悟空は袴の片足に両足を入れたり

胸元を必要以上にはだけた悟浄だったり

面倒臭いと見向きもしない三蔵だったりと

相変わらずな年始となった。






その中で素直に黒地に紅い牡丹の模様の入った着物を纏う惷香が、台所からお節の入ったお重を用意した。















「やっぱりよ
年始にゃ美人に注がれる日本酒に限るってな」


「オメーは年がら年中だろうが腐れ河童」


「ンだとォ?
エセ坊主が」


「わーい!
これ弁当?」


「悟空これはお節料理ですよ。
1つ1つに意味があるんです」


「初めて作ったからおいしいかどうか分からないけど…」

















照れた笑顔を向ける惷香に、サクサクと料理を各自箸で摘んで行く4人。
不安なんて何だったのだろう と思う程にお重の中身はカラッとなった。














「なぁもっとないの?
俺足りないんだけど」


「んじゃ、お雑煮でもいい?
お餅何個いる?」


「10個!」


「入んねーよクソ猿」


「ええー!」


「ええー?じゃねー。
普通は1個2個だろうが!」


「んじゃ〜2個で!」


「はいはい。
皆はどうする?」


「あ〜、んじゃ俺1つでいいわ。
酒のがいいしよォ」


「僕は2つでお願いしますね」


「俺は1つだ」


「はいはい」



















焼いたお餅をお椀に入れ、お雑煮を用意をして4人の元へと運ぶ。
そのお雑煮を食べながら、悟浄はニヤニヤを笑みを浮かべた。















「あ?きめえんだよクソ河童。
言いてえ事あるならハッキリ言いやがれ」


「お年玉ねーの?なぁ悟空」


「え?お年玉って?」


「オメー知らねーのかよ!
目上の人が目下のヤツにくれるお小遣いってトコだよ」


「何でやる義理がある」


「オメー日頃から下僕だ何だって言ってやがんだろーが!
だったらよこせっつーの」


「下僕にやる物なんてねえな。
鉛弾なら好きなだけくれてやる」















カチャリ――…















「年明け早々物騒な物出して来ンじゃねーよ!!」


「貴様が望んだ事だろうが!」


「"タマ"違いだっつーの!」















悟浄を追いかけ、三蔵と共にどこかへといなくなった後の3人は
ほのぼのと
『毎年変わらないなぁ』と実感していたのであった。









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