幸せな未来/参

 
朝を迎えた24日



惷香は素直に医者の治療を受けていた。


診察室前まで付き添ったのは
三蔵と八戒。

悟空と悟浄は騒がしいからと買い出しに行かされたからだ。




フラフラと吐き気を抑えながら惷香は診察室から出てきた。










「どうでしたか?」


「医者は何とぬかしていた」











2人の言葉にも吐き気を抑えながら、手を上げて
いかにも『まぁ待ちなさい』とばかりに宥め、会計を済ませた。








宿屋へと帰る道
三蔵と八戒は心配そうにチラチラ見ながら症状、医者の言った言葉を聞こうとするのだが

惷香はフラフラと口元をハンカチで抑えながら言わない。








「おい
いい加減に…!」










三蔵が痺れを切らし、声を荒げようとした途端、惷香がピタッと止まった。










「八戒。ごめんね
先戻っててくれる?
後で言うから」


「え?あ、はい
分かりました。
では後で」











八戒は何か感じたかのように、ニコリと微笑むと宿屋へと足早に帰って行った。





残された三蔵は不可思議に眉間の皺を深めながらタバコに火を付けた。







そんな三蔵に近寄り、タバコを口から奪う










「タバコはもうダメ。
ねぇ三蔵」


「…あ?」


「クリスマスプレゼント…
受け取ってくれる?」










惷香の言葉に、三蔵は物を期待をする。

だが一行に何かを手渡される気配はなかった。









「…何をよこしやがる」


「これを…」










微笑む惷香の手が触れた場所は、惷香の腹部











「…?」


「吐き気の理由
悪阻なんだって。
今2ヶ月。もし迷惑なら…」












惷香は顔を曇らせ
腹部に当てられた手が小さく震えた










「お前
まさか…」


「三蔵パパって事」









三蔵は目を丸めながら
直ぐに抱き着いた。









「よくやったな」


「…え?」


「最高のプレゼントだ」










三蔵は胸元から惷香を離し、肩に手を掛けながら照れた。




チラチラと腹部に行く三蔵の視線は、不安なんてかき消えてしまった。










「三蔵
メリークリスマス」


「ああ
仏教だが、ガキにも祝ってやる
一生傍にいろ。
愛している…惷香」










小さな声は、惷香の耳元でだけ囁かれた。




クリスマスには
三蔵への家族になる証を確信した奇跡の日…





幸せな未来.fin

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