幸せな未来/弐

 
「うう…」


「まず医者を探しましょうか」


「大丈夫だってば。
寝てれば落ち着くだろうし、食事も胃に優しいのにすれば回復するから」


「ってもよー、ずっと吐き気あるっぽいだろ?
いっつもいっつも"大丈夫よー"とか言っても、仲間を心配しねー奴なんていねーだろ」


「悟浄…」


「俺桃缶探して来るからさ!
横になってろって!な?」


「悟空…」


「宿屋に行くぞ。
悪化するようなら有無を言わさずに医者を呼ぶ。
分かったか」


「…はい」














これだけ心配されてしまうと、拒否なんて出来る事もなく
惷香は宿屋の1部屋にあるベッドに横になっていた。


八戒に熱を計れと体温計を渡され、体温計には微熱の温度が表示される。
具合が悪いのならば高熱の方が正直楽なのに…と思いながら重い身体を横にすれば、一気に睡魔に襲われる。




そう言えば最近凄く眠い日が多い。
体調が悪いからだろうが、クタッとする身体は自由が効かない。











「…
…い。
大丈夫か?」


「ん…?」














夢の世界から引き戻したのは三蔵の声。
重たい瞼を上げれば、ベッドに腰を掛けて前髪を指で額から払う三蔵の姿。














「さん…ぞ…」


「具合はどうだ」


「だいじょ…
…ちょっと辛い」














三蔵に"大丈夫"と言う強がりが効かないのは知っていた。

大丈夫と言いかけながら、素直に甘えてみる事にしたら三蔵の目が見開いて
いかにも驚いたかのような表情をした。

だが、すぐにいつもの顔になって軽い舌打ちをする。















「こんな日に体調を崩すとは、お前は余程イベントには縁がねえんだろうな」


「イベント?」


「お前忘れてやがるのか?」














町はクリスマスと賑わう時期。
ツリーやオーナメント、男女の賑わう町並みも体調不調で目に入ってはいなかっただけで
興味がないとか、忘れていた訳でもないのだが…















「今夜は大人しくベッドにいろ
欲しいのはないか?」


「今はないかな。
そうか…クリスマスなのね…」















窓の外には煌びやかなツリーやオーナメント
惷香は目を細めて窓の外を眺めた。










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