大切なもの/九
強く抱き締められた身体は
小さく震えていた身体を
やんわりと溶かした
「俺と共に来てくれるか。
例えあの金禪と対峙ようとも」
「焔となら…
もう二度と離れない」
何度目かの口付けは
甘く、切ない味がした
きっと私達の未来を予兆していたのかもしれない
…
……
………
時は過ぎ、経文は全て揃った時
焔の隣には惷香が寄り添っていた
「新天地…
焔、ずっと一緒にいれるんだね」
「勿論だ。
辛い想いをさせた…」
「ううん
焔が傍にいるだけで私は幸せだから」
「惷香…」
床に倒れる悟空の上には
新たな世界
新天地が創造され、徐々に拡がりを見せた
天界から闘神を誑かした罪で人間界に堕とされた惷香
天界に見切りを付け
惷香を追って人間界に堕ち、新天地を創造した焔
「行くぞ」
「はい」
2人は新天地へと足を踏み入れる
天界も人間界も捨て
柵も何もない世界で、2人だけで生きていくと決めた
「離しはしない。
惷香…愛している…」
「焔…私も…」
純粋に愛する者と生きる
大切なものの為に…
大切なもの/fin
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