大切なもの/八


「ほ…むら、助けに?」


「当然の事。
俺は…
お前が人間界に堕ちてから後悔ばかりだった…」


「でも、焔は500年…待っててくれたんでしょう?」


「…あの時
俺も一緒に堕ちていればと、何度も思った。
すまなかった…惷香」








胸元から離され
焔の両手は惷香の両頬を包むように添えられる







下がった眉尻
優しい目

焔は惷香の両目を見ているのか、目が左右に揺れている








「もう…離れはしない。」


「でも焔はッ…!」








焔の手の甲に手を沿える

"離れない"
と言った言葉を制するかの様に添えた手は
すぐに焔の手が繋ぎ返す








「闘神なら…辞めた。」


「なッ…!?」


「人間界に来たと言う事は
そういう事だ。」









繋がれた手を焔は口元へと運び、惷香の手の甲に唇を当てる


絡む様に繋がれた手は
小さく震えた惷香を焔に伝えた









「…気に病むな。
お前が原因ではない。
操られていた鎖を断ち切っただけの事」


「そんなのッ…!
許される筈が…」


「何もせずに見下し
闘いの時にだけ駆り出され
愛する女すら奪う天界に
最早未練もない。
許されないのなら、壊すまでだ」


「ッ…!」









真っ直ぐで力強い瞳



きっとこの手を離せば
彼は野望のままに
怒りのままに事を起こすのだろう…




だが…









「焔…私が傍にいても
いいの…?」









離れたくないと願う気持ちから、素直に出た言葉だった…









「離さない、と言った筈だ
もう二度と…!」







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