大切なもの/七
「なッ…!?」
「遅い!!」
揺れた黒髪の間から見えた金色の瞳には、カミサマが焔の刀で斬られ
倒れる姿だった―――
「惷香!!」
カミサマに抱えられていた惷香が手放され
床に落ちる寸前
焔はやっと自分の腕の中に惷香を抱き止めた
「はァ…はッ…」
「大丈夫か…」
「ほむ…ら…?」
「俺が分かるのか?」
「焔ァ…」
溢れた涙が肯定を現す
やっと出逢えた最愛の人
惷香はそのまま焔の腕の中で気を失ってしまった
「帰るぞ。」
「はい。」
「わーったよ。」
「な…んで…?
ねぇ…なん…でキミ
さっき…僕の攻撃で…」
「俺にあんな攻撃は通じはしない。
偽者には分からないかもしれないがな」
「やられた…フリ…なんて
ズル…い…よ…」
その後カミサマが三蔵から奪った経文と共に、焔は惷香を抱き抱えながらカミサマの城を後にした…
…
……
………
「ん…」
惷香が目を覚まし、ぼんやりと周りを目だけで見回す
見慣れない天井
先程のカミサマの城ではないのは明白だった
寝ているベッドは大きく
天井のある、俗に言うお姫様ベッドだった
「ここは…」
身体を起こせば、怪我をしている部分には包帯などの治療もされている
気を失う前の事を思い返す
「そ…うだ
焔ッ…!」
「呼んだか。」
ジャラ…と鎖の音と共に
焔が部屋の扉を開けて入って来た
昔と変わらない姿で
焔はゆっくりと近寄って来る
「本当に…焔…?」
「惷香…
憶えていてくれたのか。
この俺を…」
「忘れる訳ッ…!」
一気に視界が動いた
目の前には焔の黒のインナーだけ…
「またこうして抱き締める事が出来るとはな…」
「焔…」
惷香も焔の背中に腕を回し、抱き締めた
.
[ 189/216 ][*prev] [next#]
[目次]
[栞挟]
書物一覧に戻る