loved one・五





「……。」




月明かりが照らす部屋。


三蔵は煙草の煙りをゆっくりと吐く。



灰皿には溢れ出すほどの吸い殻。






――コンコン





そこへノックの音がきこえた。



面倒くさそうに立ち上がり、ドアのほうへいくと、ドアの向こう側にいる人物の声が聞こえる。



「三蔵 いる?

私‥惷香……」



三蔵はその声にピクリと小さく反応を見せるが、そのままドアノブに手をかけた。



「まって!」



すると惷香はそれを止めた。





「このまま‥




このまま聞いて」




三蔵はドアノブにかけた手をおろす。





「なんだ」



「うん…

さっきは助けてくれてありがとう」




「……。」




「そっ それだけ
ごめんね」




惷香はそういうとすぐに立ち去ろうとしたが






ガチャ





急にドアが開き、三蔵の腕が惷香をとらえた。






――ぐいっ 「ひゃっ!」





急に視界が揺らぎ、気づいたらドアの向こう側にいた。



三蔵は鍵をかけ、惷香の逃げ場を奪う。




「さっ三蔵‥!?」


「何を考えてる」



いつもと違う三蔵におされる惷香。


三蔵の顔を見ることができない。



「何故俺をさける」


「そんなこと…」





――ドクン





「なら何故俺の目を見ない」




そう言われても顔を上げられない。



ただ涙があふれてきた。





.

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