loved one・参

「怪我はありませんか?」



八戒の声に惷香はハッとした。



「だっ だいじょぶっ」



何かを隠しているように下をむき、悟空の背中に隠れた。



「惷香?」



様子のおかしい惷香を心配してみるが



「なんでもない なんでもないよ」



そういって惷香は平生をよそおった。






それから惷香と三蔵が隣で歩くこともなく、宿屋の階段を上がった。



「今日の部屋割りは‥

順番でいうと僕と悟浄が同室ですかね?」



八戒が部屋割りの話をきりだした。



「てことは惷香ちゃんは三蔵とか ざーんねん」



悟浄のその言葉にビクッ惷香の肩がふるえた。



「でっでも今日は3つ部屋がとれたんでしょ?
悟空一人じゃ心配だから私が悟空と同室になるよっ」



どうやら惷香は三蔵と同室が嫌らしい

さらに先ほどからどこか三蔵をさけているような様子。


それは三蔵自身も気づいており、わけがわからない惷香の態度に機嫌をそこねた。


三蔵は何も言わずに自分の部屋の鍵を持って行ってしまった。




その背中を惷香が寂しそうに見送るのを三人は見逃さなかった。






「三蔵と 何かあったの?」



そっと惷香の肩に手をおき、優しい口調で悟浄がいう。


すると惷香はハッとして我にかえるといつものように笑ってみせた。



「なっ何よいきなり
なんでもない なんにもないよ」





その言葉が嘘なことくらい八戒も悟浄も悟空もわかっていた。

ただいつも三蔵にばかりについていきたがる惷香が今日はちがうのと、元気がない

それしかわかることはなくて
三人は何も言葉がでてこなかった。



「さっ 早く部屋いこう
私もう疲れちゃったよ」


「う うん…」





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