恋多き男・九


「っ…はぁ…はぁ…」







悟浄達から逃げ出した惷香は町の端まで逃げていた







木に手を付き 身体を屈め
息を上げる







息をしながら 床にポタポタ…
と涙が落ちた







「う…ッ―…く……」







溢れる涙は止まらない…







惷香は手で顔を覆う


声を上げずに泣く惷香の背後に足音が近づく







「ッ―…はぁ…足はえー…」






背後からの声に 惷香は振り返る







「悟………浄…」







惷香は後退りし
一気に振り返り 逃げようとする






「おっと 待てって」






だがすぐに悟浄に捕まる







「やッ―…!」


「話聞けって」


「何を!?
今夜は帰らないって?
酷いよ悟浄…酷い…」






ポタポタ…と涙を流し
悟浄に声を荒げた



悟浄は頭を掻き

惷香をそのまま抱き寄せた








「な……―ッ」


「悪かった…
俺 惷香から逃げてたんだわ
何もかもハンパな俺が惷香を幸せになんか出来ねーって
でも八戒に怒られて思い知った
幸せに出来ねーけど、俺は一緒にいれば幸せになれるってな」


「悟…浄…?」


「幸せにしてやる
なんて大それた事は言えねーけど、俺が幸せになれる
惷香といれば な」


「…たし…だって…
私だって…!
悟浄といれたら…幸せになれる
いるだけで…」







惷香の胸元から悟浄を見上げ
涙ながらに言う



悟浄はフッ…と笑い
惷香の頭を撫でた






「なら一緒にいればお互い幸せじゃねえか」





悟浄はそのまま惷香に口付けをした





それは溢れる程の想いと共に…








恋多き男・fin










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