恋多き男・八



「いい加減にしろよ
どいつもこいつも…!
俺が何しようと自由だろうが」









悟浄は女の腕も払い退け
タバコをくわえるとポケットに手を入れ
歩き始めた








「悟浄ッ―…!」


「分かってンだよ…
アイツの事はお前よりも三蔵よりもな」


「なら何故…!」


「…大切だからだよ
大切だから…俺みたいなハンパモンにアイツを幸せになんかしてやれねぇ…
だから…」








バキッ―…!!







ドサリ…








「…ってえ…」


「はぁ…はぁ…
貴方は馬鹿ですよ悟浄…」


「ンだと!?」


「貴方は分かってない!
彼女が…惷香が幸せかどうかは貴方が決める事じゃない!
何故大切なら捕まえてあげないんです!?」


「だから俺には…!」


「見損ないましたよ悟浄
ここまで腰抜けだとはね
ハンパだろうが何だろうが
彼女が…惷香が貴方じゃないと駄目だと分かるでしょう!?」







八戒は深い溜め息を付き
悟浄から視線を外し 惷香が向かった先に視線を向けた








「惷香には悟浄じゃなきゃ駄目でも、悟浄には惷香じゃなきゃ駄目ではないのですね
ならば 僕が彼女を貰います」


「何言って…」


「本気ですよ
泣こうが喚こうが…身体で僕のモノにしてしまえばいいんですから」


「てめえ…ふざけんな!」








悟浄は立ち上がり八戒の胸ぐらを掴んだ







「盗られたくないなら捕まえてあげて下さい
ほら…早く行きなさい
謝罪は後で聞きますから」


「………ッち!」









悟浄は惷香が走って行った先へと走り出し ピタッと止まり八戒に振り返る







「八戒…さんきゅーな」








八戒は腕を組み 俯きながら笑い
手を振った








.

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