恋多き男・六
「どこに行ったのかな…」
「………あの惷香」
「どうしたの?八戒」
「悪く…受け取らないで下さいね
悟浄の事」
「…え……?」
惷香は足を止め
後ろで立ち止まっていた八戒を振り返る
「さっきの悟空の話ですよ
悟浄が惷香について三蔵とケンカになった事」
「あ………」
一瞬にして惷香の顔が曇る
「……………
僕は彼とは長く付き合っていますが 彼が怒るのには必ず理由があるんです。
だから三蔵にあれだけの怒りを露にしたのにも理由がある筈です」
「理由……?
どんな…?」
「さすがに僕もそこまでは…
けど 彼を…悟浄を信じてあげて下さい」
信じる…?
何を信じたらいいんだろう
悟浄は私の気持ちを分かっていて 三蔵に言われた時
怒ったんでしょう?
私は…悟浄に何も言えない
何も…伝えられない….
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