恋多き男・五
「へぇ…なかなか」
悟浄は左右見渡す様に店内をキョロキョロとした
そのまま片手を出し タバコを口から放し
カウンターの真ん中辺りに腰を下ろす
「ビール」
「かしこまりました」
カウンターで酒を注文し
再び左右見渡す
フ とカウンターの左側の奥に
うっすらと人影が見えた
「あん?」
悟浄は片眉を下げ
視点を集中させる
「あら こんばんは」
そこにはボディラインを強調させ 胸元を大きく開けた服
長い巻いた髪
赤い口紅
俗に言う ケバい女
が 悟浄に向かい微笑んだ
「……こんばんわ
おねーサン1人?」
「ええ
1人で寂しくて…
お相手願える素敵な人がいないか待ってるの」
女は肩に掛かった髪を後ろへとパサリ…と靡かせ クスッと笑う
悟浄は席を立ち 女の隣に座る
「俺じゃ役不足?
こんな美人を淋しい思いをさせるなんて、世の中の男は罪だね」
悟浄は自分のグラスを女のグラスにカチン…と当てた
「クス…
あら 貴方なら大歓迎よ」
その頃 悟浄が女といるとは知らずに
八戒と惷香は悟浄の行方を
町中探していた…
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