我儘弐・九


「ここの寺主は誰だ
あ?
俺が決めた事にグダグタ文句があるって言うのか?
こいつは俺専用の従者だ
何か不服はあるか?」








三蔵の“不服は認めない”
と言うオーラに僧侶達も言葉を飲むしかなかった





こんな事から惷香は三蔵と悟空と共に暮らす事となった







―その夜




三蔵の私室の1つを惷香の部屋にと開けて貰い



1人
部屋で月を窓から眺めていた




自分の寺から見るのと変わらない月――








だけど…不安が包む





その時部屋のドアを叩く音がした








「はい…?」









ドアを開けた先には三蔵がいた








「玄奘様…」


「泣いていたのか」


「あ…いえ これは…」








三蔵に背を向けて目尻を擦る




三蔵はポンッ…と惷香の頭に手を置いた








「不安がるな
俺はここにいると言った筈だ
お前は安心して俺の隣にいるんだな」


「え…?」


「お前を生かす事は俺が決めた事だ
そしてお前の傍にいる事を決めたのも俺だ」








三蔵はそのまま惷香を抱き締めた



惷香は再び拭いた涙が頬を伝った








「私も…私も玄奘様のお傍にいると…決め
山を降りました…」








月明かりが金色の髪を照らし


2つの影が重なり
朝まで離れる事はなかった…






我儘・fin

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