我儘弐・八
三蔵はピタリと足を止めた
「言った筈だ
自分で決めていいとな」
三蔵は振り返り惷香を見つめた
「来るなら来い
お前が階段を降りる事
俺の元へ来ると自分で決めたなら俺はここにいる」
三蔵の言葉に袴を掴んだ手が緩む
自然に右足が前に出て
ザシュ―……
と、草履が階段を踏む感覚が
ジワリ…と染みた
「着いて…行きます
何処までも…」
惷香が階段を降り切った時には
朝日が上り
明るく輝く金糸は
惷香の道標となった――
―――慶雲院
「いけません!
女人を寺に入れるとは…!
言語道断!
それでも寺主でございますか」
慶雲院に帰った3人を待ち受けたのは寺にいる僧侶達の猛反対
「ただでさえ
僧でもない野生児がいるだけでも頭が痛いと言うものを…」
「え?野生児なんてどこにいんの?ねぇねぇ」
「
貴方です!」
いらぬ火の粉まで浴び
三蔵の眉間には深い皺が寄る
「なぁなぁケチケチしねーで
1人や2人いいじゃん!」
「いけませ…」
「うるせぇんだよ」三蔵の低い声に僧侶も悟空も
ピタリと止まった
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