我儘弐・六
三蔵はタバコをくわえたまま立ち上がり
首の後ろを掻いた
「この寺の過去の経歴は事前に調べてあった」
三蔵は煙をフゥ…と吐き出した
この寺は代々妖魔に自分を捧げる神子が産まれる一族だった
当然惷香の母は惷香を産んで直ぐ
この世を去っていた――
ただ惷香は独身で
他に女の姉妹もいなかった
惷香の父は
惷香の伴侶を捜していたのだが
病弱の為叶わずに他界
もし惷香が喰われていた場合は
その後神子がいない状態となる
そうなれば妖魔は世に放たれるだけだった―――
「なぁ三蔵
何で惷香の髪を入れたんだ?」
悟空の言葉に惷香は自分の髪が短くなっているのを知った
「あれは封じた妖魔が壷の中が神子の中にいる
と思わせる為だ」
3人は建物から出て
月夜が明るい事を知った
「神子の髪
と言うのは元々妖力がある
と言われている
お前には悪いが命には代えられん」
惷香は袴をギュッ…と握った
.
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