我儘弐・五
「惷香!
落ち着け!」
三蔵は妖魔に再び呪文を唱える
「惷香
落ち着けって!
三蔵が…三蔵が助けてくれっから!絶対!」
悟空は惷香の両肩を掴みニコッと笑った
悟空の笑顔に安堵し
三蔵を固唾を飲んで見つめた
額には汗
眉間には深い皺を寄せ
ググっ…と操る指に力が篭る
グッ…グオ…建物の天井まであった煙は
みるみる内に壷に吸い込まれて行った
「っ…く…!」
三蔵は目を見開き
壷に惷香の切った髪を入れた
そして封をすると残りの札を貼り付けた
「…ふぅ…」
三蔵はドサリ…と後ろに手を着いて安堵した
「三蔵!
上手く行ったのかよ!?」
「当たり前だ
俺を誰だと思ってやがる」
三蔵は袖からタバコを取り出し
タバコに火を着けた
「玄奘様…一体…」
フラリ…と惷香は立ち上がり
何が何だから分からず困惑していた
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