我儘弐・四


「惷香!?」









悟空は惷香を見つめ
肩をグッ…と揺らす








「あ…いっ…たい…
わ…たし…」









意識も微睡み
惷香の目の前には心配そうに見下ろす悟空の顔





忌々しいまでの妖気に惷香はビクッ!と身体が揺れた









「あ…ッ!」









三蔵にジワジワと近寄る禍々しいまでの妖魔に

惷香は顔がみるみる蒼く変化して行く








「げ…玄奘様ッ!」








惷香はガバッ!と起き上がり声を上げた








「ダメだ!惷香!!」








悟空が惷香をグッ…!と抑えた






惷香の声に反応し
漆黒の煙は再び暴れるかの様にうねり上がる








「くッ…!馬鹿がッ!」








漆黒の煙はもうもうと建物の天井にまで広がり


赤い2つの光を放ち始めた










「な…んだよアレ…
目みてェ…」









悟空もゾクッと背筋が凍った








「あ……あれ…は…」








惷香はガタガタと震え出した






幼い頃から夢に出てきた妖魔―



何度も何度も追い掛けられ


まるで水中を走るかの様に

全く前に進まない自分



捕まる瞬間に目が覚め


いつも
いつでも怯えていた相手





惷香は顔面蒼白になり


涙がうっすら浮かぶ






.


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