我儘弐・参
ズズ…ズ…ズ…
煙の中からゆっくりと惷香の姿が現れ始めた
「惷香!」
悟空は意識のない惷香が煙から解放され
倒れる瞬間に抱き止めた
「おいッ!惷香!」
気を失ったまま
目を開けない惷香に悟空は
「ごめんな…惷香…」
と呟くと思いっきり
ブチッ―…!
腰程まであった惷香の漆黒の髪を肩辺りまで切った…
切った髪を急ぎ三蔵に手渡す
「よくやった」
三蔵は髪を受け取り 再び呪文を唱えた
指の動きのままに操られ
漆黒の煙はゆっくりと三蔵の目の前にある壷に近寄って行く
だが煙は悶え苦しみ
拒否し始めながら地鳴りの様な声を上げた
グオ…オ…オ!!「くッ…!」
三蔵は眉間に皺を深め
苦痛な顔を浮かべた
「三蔵ッ!」
悟空は倒れ込む惷香を抱き抱えながら心配そうに声を上げた
「ん………」
悟空の声で惷香がピクリ
と動いた――――
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