我儘・六
「運命?
運命で片付けられる人生だってのか
お笑い草だな」
三蔵は鼻でクッ…と笑う
惷香は三蔵の言葉に眉間にクン…と力が隠る
「玄奘様…
何が言いたいのです?」
「そんな事も分からないでよく神子なぞやっているものだな」
「侮辱なさっておいでですか
それとも挑発でしょうか?」
「どちらでもねぇがな」
三蔵はタバコに火を着けると
スゥ…と吸いフゥ…と白い煙を部屋に漂わせた
「お前は【運命】と思うしか
お前が生け贄とならなければならない理由がないだけだろう」
惷香はまた膝の辺りの袴をグッ…と掴んだ
三蔵もそれ以上言う事もなく
夜は更けて行った―――
次の日の朝も
惷香は今まで通りの態度で三蔵に接した
ただ目を合わす事なく…
「ちっ…」
三蔵は悟空に料理を運ぶ惷香の姿に苛ついていた
料理を運ぶ姿だけではなく
惷香が無邪気に笑う姿や
自分の衣類を繕う姿
訪問者も少ないのに毎日毎日掃除をする姿にすらイライラとしていた
三蔵自身
何故こんなにも苛つくのか全く分からなかった
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