六拾五
「三蔵……は…?」
「あ、あぁ
まだ出血がひでェよ」
「観世音菩薩もいなくなってしまいましたからね
このままでは……」
「どいて…」
フラリと三蔵に近寄る
腹部からの出血が法衣を深紅に染め
顔は真っ青で息も小さい
惷香はスッと三蔵の頬に手で覆う――
「待ってたんだよ
本当にずっと…」
そう呟くと
息を飲む八戒と悟浄を余所に三蔵の唇に自分の唇を静かに重ねた
スゥ――
三蔵は深い息をした
「三蔵!?」
「おい 一体……」
「もう…大丈夫」
「惷香
あなた一体……」
「私は――…」
ビクッ
身体が痺れた
その瞬間惷香の両手首に金色のブレスレットが嵌められた
そのまま悟空同様に意識が途絶えた
薄れゆく意識の中で
八戒と悟浄が心配そうに近寄る姿が見えた…
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