六拾参


「おいお前コッチに来い」


「え…?」









惷香は座ったまま左右を見渡す









「お前だよ お ま え!」


「あ、あの何か…」








恐る恐る立ち上がり雨に打たれ観世音菩薩に近づいた

観世音は少し顔を上げ
フフッと笑うと惷香の首に腕を回した


そして 耳元でヒソリと言う









「お前コッチの世界は慣れたか?
と、言うかアッチの世界が…だがな」


「え、どういう…」


「コッチ来てから大変だったろー?
おかしな夢見たりよ〜」


「!!
どうしてそれを!?」


「お前 自分の指先見てみろよ」









そう言われ 手の平を見ながら指先を見る

あ 中指が荒れてる









「あのこれが何か…?」


「そうじゃねーよ
何か指先熱くねェか?」


「え…?」









そう言われ指先に集中して見ると
指先が熱くなって来る








「こ、これは?」


「お前まだ思いださねェの?」


「え…?」









その後観世音が惷香の耳元で囁いた事
それを聞いた瞬間

足元からガクリと崩れ落ちた










『夕惷
金禪が待ってるぜ…』――










「惷香!!」


「どうしました!?」


「う…あ…」









ガクガクと震える









「一体貴女は彼女に何をしたんです!?」


「なァに
本当の事を言っただけだよ」


「おいッ待てよ!!
三蔵はどうすんだ!?」


「ま 俺が何かしなくても大丈夫だろ」


「クッ…あぁぁ…」








惷香は腕を抱える様に前屈みに倒れ込んだ








「彼女はどうしたと言うんです!?」


「生まれ変わるんだよ
元の姿にな」


「元の 姿…?」


「それ どーゆー事だよッ!!」


「そいつはなァ違う世界に飛ばされ
その世界に合う身体で産まれた
だがこの世界に戻って来たが身体も頭も追いつかない
だから身体が戻ろうとしてんだよ
この世界での
あるべき姿にな」


「あるべき…姿…?」


「おいおいおい!
意味分かんねーよッ!」

「バカかてめェは
ま、もうすぐ戻るだろうよ
そいつに言っておけ
”お前が待っていたんじゃない
アイツがお前を呼んだんだ”とな」


「アイツ?」


「――じゃまたな」


「あ!ちょッ…」









その瞬間観世音と次郎神は消えた










そして雨の中 気を失ったままの悟空
出血で危険な状況の三蔵
苦しんだままの惷香


雨が3人を苦しめる様な程
空から降り続いた








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