弐拾
「どうされました?
大丈夫ですか…?」
八戒の声でハッとする
意識を戻すかの様に取り繕い
「いえボーッとしてしまって…」
と答えた
「あの 良かったら僕達が泊まる宿に来ませんか?
男ばかりでむさ苦しいんですけどね」
八戒はハハハッと笑いながら惷香に言う
「いえ そこまでは…」
「でも泊まる場所もないと大変ですよ?
少し話もお聞きしたいですし…
力にもなれるかもしれませんしね」
八戒はニッコリと微笑む
でも流石に今日知り合ったばかりの人にそこまで迷惑を掛ける訳には行かない
と躊躇っていた
「あ、そう言えば惷香さんが持っていた本なんですけど
車にお忘れでしたし…ね?」
ハッと手を見ればあれだけ大事にしていた本がない事に気が付く
「あ…」
「さ 行きましょうか」
八戒はクルリと方向を変えゆっくりと先に進む
「でも…」
惷香は留まったまま声を掛ける
八戒は振り返り ニコッと笑う
「ここまで来たら遠慮はナシです
ね?」
そう言うと惷香の隣に並ぶかの様にして宿屋へと向かった
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