百五拾弐
惷香の部屋に焔が訪ねて来る事はなかった
紫鴛がお茶や食事を運び
たまにボソボソっと会話をする程度
全く意図が読めない
何故私をこんな部屋に閉じ込めたまま
本人は何も行動しないのか
不安を余所に着々と焔は動いていたのだが
惷香はそれに気付く事はなかった
ブロロロロロ…
ジープが岩場の多い暗闇へと走っていたのは同じ頃
銃に弾を込め
カシャリ――…と音を鳴らす三蔵
運転をしながらも真正面に遠くからも見える登城を睨む八戒
タバコをくわえながらも火を着けずにライターの蓋を開け閉めを繰り返す悟浄
握り拳に力を込めて願いをも込める悟空を乗せ
ジープは焔の居城
混沌の塔へと辿り着いた
「ここか」
悟浄は塔を見上げピューと口笛を鳴らした
「混乱の塔…
間違いない様ですよ」
「あそこにアイツらがいるんだよなッ!」
伏せた目を三蔵はカッと開く
「行くぞ!」
ジープはタイヤを鳴らしながら混乱の塔へと突き進んだ
「来たか…」
謁見の間の玉座で1人
焔は呟いた
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