百五拾壱


「悟空 眠れませんか」








小屋の中で何度も寝返りを打つ悟空に八戒は困った様な笑顔で声を掛ける








「大丈夫…だよな?」


「どっちが…ですか?」


「どっちもだけどさッ…!
俺…惷香に…」


「悟空
それは皆同じですよ
貴方だけじゃない…」









パチパチっと焚き火が木を鳴らす
三蔵の分の焼かれたマスは
すっかり冷め切っていた








「だけどさっ…!」


「取り戻せばいいんです
無理に彼女をどうにかする事はない筈です
今は三蔵が目を覚ますのを待ちましょう」


















三蔵は夢を見ていた



何故か下を向けば髪が顎にサラリと流れて来る長さ



どうなってやがる…









退屈な日々


取り巻く人達



何故か違和感もない日々





そんな世界に慌ただしい事が起きたのが
捲簾大将の解任問題



めくるめく周りの環境に





三蔵の意志とは別に
夢の中の
【三蔵の意識がある人】は


不機嫌な日々が多かった


















ハッ――…!








一気に現実に戻った三蔵は
肩から腹部への刀傷の痛みで
顔をしかめた



まだ夜明け前


ゆっくりと外へと歩き
タバコに火を着ける








「取り返すだけだ」








煙をフゥと吐き出し
真正面には太陽が顔を出した








「三…蔵?」









三蔵が振り返ると悟空が立っていた








「何だ」


「三蔵…だ…
良かった…」









ポロポロ…


悟空の涙が零れる









「何泣いてんだ てめェは」


「だって…
俺…魚釣ったんだぜ
でかいマスでさ…」


「…ああ」


「三蔵…起きないからさ…」


「取っておけよアホ」


「ごめん…」









しょんぼりとする悟空の頭を
クシャリと撫でた









「行くぞ 猿」


「っつ!うん!」









朝日がいつもより
眩しかった





.

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