百四拾九
八戒と悟浄は三蔵と悟空を抱きかかえ
古い小屋に身を寄せていた
傷口を八戒がどうにか塞いだのだが
出血や精神的ダメージで三蔵は泥の様に眠っていた
そんな三蔵の横で見守る八戒は
ただ三蔵が目覚めた際に
惷香の事について自分を見失わないか
そんな不安もあった
悟浄はタバコを出すと
クシャリと箱を潰し
小さな声で
「ちっ…しまらねぇな」
と舌打ちをする
そんな重い空気の中小屋の扉が勢い良く開いた
「なぁなぁ見てくれよ!
俺こんなに魚釣ったんだぜ!
ひーふーみー…11匹だから1人3匹なっ!
あ 余ったら勿論俺のでー
塩、塩!どこだっけ?
ほらほらジープどいてどいて」
「キュ〜」
悟空の空気に悟浄も八戒も
フッと気持ちが穏やかになった
「なーに言ってやがんだ!
俺が食うっつーの!」
「何でだよっ!
釣って来たのは俺だぞ!」
「ばぁーか!
釣らせて頂きました だろ!」
「おやおやこれは美味しそうなマスですねぇ」
「このデッカいのは譲んないかんね!」
―混乱の塔―
「とうとう…手に入れた
後は…悟空のみ…ぐぅっ!」
焔は謁見の間の玉座に座り
胸をグッと掴み肩で息をする
「まだだ…もう少し…
もう少しで…願いが叶う…
保ってくれよ…俺の身体…!」
塔の最上階の1部屋に
白いレースの天蓋に囲まれたベッドがある
そこには気を失ったままの
惷香が横たわっていた
混乱の塔の外は日の光も差さない地域で曇天がより一層塔を禍々しさを醸し出していた
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